名前の由来
名前が「前のチャピ」って、おかしいと思われるでしょう。名前は「チャピ」でした。この子は1年足らずで天に召されました。それで、3匹目の猫は、このチャピの分も生きて欲しいと願い、同じ「チャピ」と名付けたのです。そういう訳で、妻と、この子のことを話すときは、前のチャピと呼ぶようになりました。
出会い
熊本日日新聞の読書欄に、菊池市在住の方が、子猫を譲りたいとの記事が載っていましたので、6月25日(土)に菊池神社で会うことにしました。この猫の第一印象は、「あまり、可愛くないなぁ」。尻尾が根元でくるりと輪を描いています。耳が長いです。顔が小さくて三角です。細身でしたが、身長はありました。生後4ヶ月くらいだそうです。
「どうしようかなぁ」と悩んでいたんですが、私にしっかりと抱きついて離れません。それで、譲り受けることにしました。家に帰って、その晩、一緒にベッドで寝ようとすると、私の身体に細い身体をピッタリと寄せてきます。「寝返りして、押しつぶすんじゃないか」と心配したほどです。
翌朝、ソファーに座っていると、前のチャピが走ってきました。そして、ソファーの背もたれを蹴って三角飛びをします。空中では、ムササビのように4本の足を広げて飛んでいます。「おまえは、ムササビか」。着地した「前のチャピ」を思わず抱きしめました。どうやら、我が家を気にいってくれたようです。一安心です。
前のチャピのきょうだいは、みんな新しい家族が決まって、前のチャピだけが、残っていたのです。たぶん、「自分も、よその家に行かなくては、いけないのだろう」と、わかっていたのでしょう。それで、すんなり我が家になじんでくれたと思います。その点で、3匹目の猫のチャピは、我が家になじんでくれなかったんじゃないかと思っています。
性格と日常
この子は、おてんばで、怖い物知らずでした。人間でも、大きな猫でも、大きな犬にでも平気で近づいていきます。外には出さないようにしていたんですが、どうしても、外に出たがるので、外に出て遊ぶようになりました。遊び先が、二軒隣の家です。そこには、おとなしいですけど、大きな犬がいます。その犬のそばにいつもいるのです。私が仕事から帰宅すると、私の前をジグザクに走ります。その後、私の肩に乗って家の中に入ります。それから、ごはんです。「ハウッ、ハウッ」と声をだしながら、無心に食べます。ごはんが済むと、さっさと2階への階段を上り、クローゼットの中で眠ります。一日中、外で過ごしていたので、お腹もすいて、疲れていたのでしょう。そして、夜中に私たちの布団の中へ入ってきます。
大きな猫の頭をポカリ
2月でした。庭で、見知らぬ大きな猫が、目をつぶって、ひなたぼっこをしていました。前のチャピが、その猫にソーッと静かに近づいて、なんと、その猫の頭を「ポン」と軽く叩いたのです。前のチャピは、叩いた後、すぐに逃げます。大きな猫は、「ウン、ナンダ?」という風な感じで目をあけ、逃げていく前のチャピを見ます。そして、何もなかったように、また、目をつぶり、ひなたぼっこを続けました。よせばいいのに、また、同じことをしました。今度は、大きな猫も怒って、逃げる「前のチャピ」を追いかけます。
何食わぬ顔で、「前のチャピ」は戻ってきたので、無事、逃げ切れたんでしょう。
ダールマさんが転んだ
下左の写真は、タンスの陰に隠れていた「前のチャピ」が、私を驚かそうと,ヒョイと出てきた場面です。
階段を降りるときに、「ダールマさんが転んだ」をよくしていました。私のあとをついてきているのに、振り向くとパッと動かなくなるのです。また、歩きだすと、ついて来ます。そして、振り向くと、また、止まります。
反対に前のチャピが前を歩くときは、後ろを見ながら、「ちゃんと付いてきているかな」という感じで、振り向きながら歩きます。
大雨が降っていた朝、いつものように外に遊びに行こうと、元気よく玄関をでました。軒先で立ち止まり、雨がザアーザアーと降っているのを、じっと2,3秒眺めたあと、クルッと1回転して家の中に引き返しました。その時の動きが、「今日は、いかじゃった」と言っているようで、我が家では、今でも語り草です。
布団の中でため息
活動的でおてんばでしたが、私たちの布団の中で、過ごす時間は長かったです。クローゼットの中で一眠りしたあと、夜中に布団の中に潜り込んできますが、私たちが起きるまで布団の中から出ません。仕事が休みの寒い冬の朝は、私たちがいつまでも起きません。そうすると、「フーッ」と大きなため息をつきます。「まだ、起きないのかなぁ」。
お別れ
5月。仕事から帰宅して、車から降りると、「前のチャピ」が遊びに行っていたお宅の奥様が、近づいてこられました。そして、自動車事故で「前のチャピ」が亡くなったこと、運転手さんがものすごく、悲しまれていたこと、菓子折を渡されたこと、事故現場の近くの空き地に埋葬されたことを説明されました。
家の入り、「前のチャピ」を譲り受けた方に電話をかけました。事情を説明しているうちに、涙があふれてきました。「こんなことになって、申し訳ありません」。謝る私に「ずっと、家の中に入れとくわけにもいかないから」と慰めて頂きました。
月見草
上右の写真の花は月見草です。「前のチャピ」がいた頃、我が家の庭だけに、この花が咲いていました。植えたわけではありませんし、近所にも咲いている様子はありませんでした。
「前のチャピ」が、天国に行ってから、1年が経った5月、空き地の一角、そうです、「前のチャピ」が埋葬されている場所だけに月見草が咲き始めました。
この花の名前を知りませんでしたが、ネットで調べて、あのプロ野球の野村克也選手(監督)の言葉で有名な「月見草」だと知りました。
たった1年で天国に行った「前のチャピ」でしたが、活動的に精一杯生きたと思います。そうは思っても、やはり残念で、もっと長生きして欲しかったです。もっと、もっと元気に遊んで欲しかったです。ごめんね、「チャピ」。
それで、次の猫は外に出さないことにしました。こんな事故で亡くなるのはイヤです。そして、名前は「前のチャピ」の分も精一杯生きて欲しいとの願いを込めて、「チャピ」にしました。
野村克也さんの語録
自分をこれまで支えてきたのは、王や長嶋がいてくれたからだと思う。彼らは常に、人の目の前で華々しい野球をやり、こっちは人の目のふれない場所で寂しくやってきた。悔しい思いもしたが、花の中だってヒマワリもあれば、人目につかない所でひっそりと咲く月見草もある」
コメント